私のおさげをほどかないで!
凜子(りんこ)()()()()()()()()よな?」

 奏芽(かなめ)さんが、どこか感情の起伏に乏しい声でそう問いかけてくる。
 その有無を言わせない言い方に呑まれて、即座に「はい」と答えてしまっていた。

 どの道のぶちゃんと出かけるつもりで支度はしてあったし……問題はない……はず。
 ただ、髪型が……、とぼんやり思ったところで、奏芽さんが「すぐ出てこられるよな?」と決めつけるような物言いをしたことに気がついて、心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。

 そう言えば奏芽(かなめ)さん()、私からの「何をしていたのか?」という質問に答えてくれていない。

「あ、あの……」

 恐る恐る奏芽さんに呼び掛けたところでチャイムが鳴って――。

 その音に、私はビクッと身体を震わせる。
 電話中に来訪者があるこの感じ、さっきも経験したばかりだ。

「凜子、俺だ。――ドア、開けろ」
 ついで電話口から聞こえてきた声に、私は絶望に似た感情を覚えたの。

 奏芽さん、多分――。
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