私のおさげをほどかないで!
「私の……せい……?」

 多分そうなんだと思う。
 でも、同時に私なんかのために嘘でしょう?とも思ってしまって。

「いつも余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)奏芽(かなめ)さんらしく……ないです……」

 強引なキスを思い出して、思わず責めるようにそう言ったら、
「――なぁ凜子(りんこ)。俺が……凜子に対して余裕なんてあると……本気で思ってんの?」

 熱い吐息とともにギュッと抱きしめられた私は、奏芽さんから耳元で切なそうに掠れた声でぼそぼそと問いかけられた。
 奏芽さんの低音ボイスが耳から全身に染み込んでくるようで、その余りの艶っぽさにゾクゾクしてしまう。

「好きだ、付き合ってくれって告白しても、諸々のことに片がつくまでは待ってくれ、とか言ってすぐにOKくれないようなクソ真面目な女。――今まで相手にしたことねぇんだよ、俺は」

 吐き出すようにそうつぶやかれて、私はハッとする。
< 172 / 632 >

この作品をシェア

pagetop