私のおさげをほどかないで!
***

 店外に出たところで、ふと視線を感じた気がして、私は思わず立ち止まる。

「――?」
 キョロキョロと辺りを見回してみたけれど誰もいなくて。

 気のせい、かな?

 そう思っていたら、奏芽(かなめ)さんが車から降りて私の方に歩いていらした。

凜子(りんこ)、どうかしたのか?」

 コンビニから出て、辺りを気にして落ち着かない様子だった私を見て、心配してくださったみたい。

「あ、いえ何でも……」

 言って、奏芽さんを見たら、彼、とても薄着で。

「さ、寒くないんですかっ」
 モコモコに着込んでいても寒いのに、風邪ひいちゃう!

 小豆色のロング丈Tシャツ――そんなに厚手に見えない!――に、黒のスキニーパンツを合わせただけ。上着すら羽織っていない彼の軽装に、私は思わず(とが)めるような口調になってしまった。

「いや、車ん中(ぬく)いし……何なら診察室(しょくば)も暑いぐらいだし」

 私の剣幕に苦笑しながら奏芽さんが言って、「ほら、今も車の温度設定、凜子仕様にしてあるから」って頭を撫でられた。
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