私のおさげをほどかないで!
***

 買ったもの――四季(しき)ちゃんはコーヒー、私はミルクティー――を学生ホールで2人並んで飲んでから、その足で待合場所(正門)を目指す。

 予め届いた奏芽(かなめ)さんからのメールによると、迎えに来てくださる方たちの仕事が終わるのは16時40分とのことで。大学(ここ)には17時までには着けるだろう、と書かれていた。

 時計を見ると16時45分。

 奏芽さんがいつも迎えに来てくださる辺りに立っていたらいいのかな?

 メッセージによると、お相手の車は“ワインレッドのミニバン(ソリオバンディット)”らしいのだけど、車に疎い私はミニバンもソリオバンディットもぴんと来なくて。

 さっきミルクティーを飲みながら、スマホで「ソリオバンディット」を検索してみたの。

 その様子に気付いた四季ちゃんが、「私、ソリオなら知ってるから大丈夫だよ」って言ってくれたけど、私、自分でも知っておかなくちゃ、何だか落ち着かない性分で。

 「赤って、白や黒に比べたら台数も少ないし、目立つはずだよ? もう少し力抜いて構えてても平気だよ」って、と苦笑いする四季ちゃんに、「でも四季ちゃんの彼氏さんの車……」ってつぶやいたら、「あ。ごめん、うちのも赤でした」と。
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