私のおさげをほどかないで!
***
今日は木曜日で、奏芽さんは休診日。
だからかな。今朝はアパートまでお迎えに来てくださって、大学へ送って頂けることになった。
その道すがら、例の空き家だった家の前を通ったので、私は半ば習慣のようにふとそこを眺める。
と、玄関先で人影が動いたように見えて――。
初めての住人の気配に、私は思わず後ろを振り返ってまでその姿を確認しようとしてしまって、奏芽さんに「どうした?」と聞かれてしまった。
私はその家について日々感じていたこと諸々を、奏芽さんにそれとなく話したの。
「――ってことは結局越してきたのが男か女かすら、まだ分かってねぇわけか」
奏芽さんは独り言のようにそうつぶやいてから、「あ、……そもそも1人とも限らねぇよな」と、私では思いもしかなった――でも考えてみれば至極当たり前のことをおっしゃった。
「確かにそうですね。私、全然そんなこと思いつかなかったです」
平家とはいえそこそこの大きさの――3人家族想定くらいに見える家なのだ。
素直に感心したという気持ちを言葉の端々に載せて奏芽さんを尊敬の眼差しで見つめたら、「けど……」って私に一瞬だけ視線を流すの。
今日は木曜日で、奏芽さんは休診日。
だからかな。今朝はアパートまでお迎えに来てくださって、大学へ送って頂けることになった。
その道すがら、例の空き家だった家の前を通ったので、私は半ば習慣のようにふとそこを眺める。
と、玄関先で人影が動いたように見えて――。
初めての住人の気配に、私は思わず後ろを振り返ってまでその姿を確認しようとしてしまって、奏芽さんに「どうした?」と聞かれてしまった。
私はその家について日々感じていたこと諸々を、奏芽さんにそれとなく話したの。
「――ってことは結局越してきたのが男か女かすら、まだ分かってねぇわけか」
奏芽さんは独り言のようにそうつぶやいてから、「あ、……そもそも1人とも限らねぇよな」と、私では思いもしかなった――でも考えてみれば至極当たり前のことをおっしゃった。
「確かにそうですね。私、全然そんなこと思いつかなかったです」
平家とはいえそこそこの大きさの――3人家族想定くらいに見える家なのだ。
素直に感心したという気持ちを言葉の端々に載せて奏芽さんを尊敬の眼差しで見つめたら、「けど……」って私に一瞬だけ視線を流すの。