私のおさげをほどかないで!
「――?」
 キョトンとしてそんな奏芽さんの横顔を見つめたら、「凜子(りんこ)がまだ1度も住人に出会わないってのを考えると……単身者の可能性が高い気もするな」とか。

 住んでいる人間の人数が多ければ、それだけ遭遇率は上がるはずだから、って。

 やっぱり奏芽さんは頭がいいなって思ってしまった。


奏芽(かなめ)さん、名探偵になれそうです!」

 思ったままを言葉にしたら、フッと小さく笑われてしまった。

「俺、今の仕事気に入ってっからな。いくら凜子(りんこ)に勧められても転職は無理だぜ?」
 って。
「す、勧めてなんかっ」
 慌てて言ったら「分かってて揶揄(からか)ってんのに相変わらず真面目だな、凜子は」と、ますます笑われてしまった。

< 238 / 632 >

この作品をシェア

pagetop