私のおさげをほどかないで!
「そんなひどくしたら赤くなるよ?」

 心配そうに言われたところで、谷本くん側のレジにお客さんが並ぶ。

「いらっしゃいませ」

 谷本くんの意識がそちらへそれたことにホッとして、私も自分側へ並んだお客さんの対応をする。

「ありがとうございました」
 商品を手に去って行くお客さんにペコリと頭を下げてから、ふと顔を上げると金色の頭をした長身の白衣姿が飛び込んできた。

(わ、派手な人……)

 絶対に自分とは無縁の人種だと一目で分かる、チャラチャラした雰囲気の男性は、見た目に違わずド派手な長髪美女に腕を絡められていて。

(白衣ってことは……医療関係者か……マッドサイエンティスト?)

 なんだか後者の方があの人には似合っている気がする。

 店舗入り口から、私がいる奥側のレジまで優に5メートルはあるのに、彼らが店内に入るとしばらくして甘ったるい香水の香りが漂ってきた。

 この匂いを身に纏っているのは多分女性のほう?

 接客をしながらも、甘えたような少し高めのトーンで話しかける声が耳についてしまって仕方ない。
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