私のおさげをほどかないで!
 セレストアまでは徒歩圏内ではあるけれど、履歴に残った私のスマホのロスト地点は()()ではないのだと言外に含ませるところに、この男の底意地の悪さを見た気がして。

「ホントはもっと遠くまで持って行って切りたかったんだけどさ、キミをあまり長いことひとりぼっちにしておくのも心配でしょ? (りん)に内緒でそっと出かけたし……なるべく早く帰ってきたかったんだ」

 だから、近場で私がいてもおかしくなさそうな場所、奏芽(かなめ)さんがそう思って惑わされるであろう場所を選んで、そこで電源を切ってきたのだとクスクス笑うの。

 心底吐き気がする男だと思った。

 そうして、それに振り回されるかも知れない奏芽さんを思うと、私の胸は押しつぶされたようにチクチクと痛んだ。

***

「で、これ、何を買ってきたでしょう?」

 聞かれて、ビニール袋を持ち上げる男に、どうでもいいって思ってしまった。
 私には関係ないもの。

「凜、今、自分には関係ないとか思ってるでしょ? 残念! 大有りだよ!? だってコレだもん」
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