私のおさげをほどかないで!
「何にしても……その、勝手に……すまん」

 言いながら申し訳なさそうに、
「むかし親父がさ、妹のスマホに音芽(おとめ)に無断で位置情報通知するアプリを入れてるの知ったとき、俺、ぶっちゃけ軽く引いたんだよ。けど凜子(りんこ)のコートにこんなん仕込んでる時点で――やっぱ俺もあの人の血、引いてんだよなって思っちまって。――気持ち悪いやつでごめんな」

 って再度謝るの。

奏芽(かなめ)さん……」

 60mしか有効範囲がなくて……その上GPS機能さえ搭載していないとなると、監視されているとは言い難いと思うの。
 それに……奏芽さんの言う通り私、これの存在を知らなかったから変にコートのことを気にしないでいられた、とも思う。

「気持ち悪くなんてないです。……むしろ奏芽さんが彼氏で本当に良かったって思います……。私のことを大切に思って下さって、ありがとうございます」

 実際、この小さなタグがなかったら、私は今、奏芽さんのことをこんな風に正面から見つめることなんて出来なかった気がするの。

 あの時、もう少し奏芽さんが来てくださるのが遅れて……あの男に初めてを奪われてしまっていたとしたら――。

 私はきっと自分を許せなかった。
 奏芽さんがあんなに大切にしてくれた自分の純潔を守りきれなかったこと、責めて責めて責め抜いたと思う。

 だから――。

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