私のおさげをほどかないで!
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「向井さんがきてくれて、みんな各々の仕事に専念できて、本当助かってる」

 奏芽(かなめ)さんいわく、ここで一番の古株に当たられるらしい看護師長の田中さんにそう言って目を細めていただけて、自分がやっていることは無駄じゃないのだと実感させてもらえるのも本当に幸せで。

「お役に立てて嬉しいです」

 私は基本的に病院のスタッフさんたちの休憩室――診察室に隣接した処置室と、仕切り一枚で繋がった空間で、日がな一日、病院に来た子供たち(患者さん)へのご褒美のための折り紙細工や、院内に飾る壁飾りなどを作って過ごしています。

 今まではこういうの、スタッフの皆さんが空き時間などを利用して作っていらしたとかで、そういう一切合切(いっさいがっさい)を私が引き受けたことでみんなの負担が減っているのだと奏芽さんが言って下さって。

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