私のおさげをほどかないで!
***

「眠い?」
 聞かれて私は小さくうなずいた。
「奏芽さんは?」
 聞いたら眉根を寄せてはぁ、っと溜め息を落とされた。

凜子(りんこ)が同じ部屋にいると思ったらなかなか、な? けど……これから凜子のお母さんに会うと思ったら段々気分が引き締まって覚醒してきたわ」

 ハンドルにもたれかかるようにして助手席に座る私の方に手を伸ばしていらした奏芽さんに、優しく頬を撫でられる。

「ハルも……うちの親に挨拶した時、こんな気持ちだったんかなぁ」

 ポツリと落とされた言葉に、私は瞳を見開いた。

霧島(きりしま)さんも?」

 問いかけたら「あ、違うわ。あいつらん時、鳥飼(うち)の親が霧島(あっち)の親を家に招いてごちゃごちゃになったんだった」って苦笑するの。

 奏芽さんたちが仲良しなのは、親御さん同士がお隣同士で、元々仲が良かったからだとお聞きしたのを思い出す。

「わー、何だよ、俺のほうがハードル(たけ)ぇじゃん」

 そこで私をギュッと抱きしめて、
「凜子、ごめん。少しこのまま……」
 そう言った奏芽さんが、ほんの少し震えているように感じられるのは気のせい?

 緊張してます?と言う言葉は口に出さず、そっと心中に留めておいた。

 私も……奏芽さん同様緊張していますよ?と言う気持ちとともに。
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