私のおさげをほどかないで!
***
実家――市営住宅――近くのコインパーキングに車を入れて、徒歩で304号室を目指す。
奏芽さんの手には、お母さんの好みに合わせてあらかじめ2人で買っておいた焼き菓子の詰め合わせが入った紙袋が握られている。
約束の時間の10分前にチャイムを鳴らして、お母さんに出迎えてもらって――。
玄関先で軽く挨拶を済ませてから中に通された。
小さい頃から住み慣れたはずのこの家が、奏芽さんがいらっしゃるというだけで異空間みたいに感じられて変に緊張してしまう。
お母さんが淹れてくれたコーヒーを前に、お母さんの正面に奏芽さん、奏芽さんの左隣に私、という席順で座った。
みんな正座をして畏っていて……壁にかかった時計の秒針が時を刻む、カチカチという音がやけに大きく聞こえて。
そんななか、最初に沈黙を破ったのは奏芽さんだった。
「初めまして。凜子さんとお付き合いさせて頂いています鳥飼奏芽と申します。父が院長をしている小児科で副院長をさせていただいています」
と。
実家――市営住宅――近くのコインパーキングに車を入れて、徒歩で304号室を目指す。
奏芽さんの手には、お母さんの好みに合わせてあらかじめ2人で買っておいた焼き菓子の詰め合わせが入った紙袋が握られている。
約束の時間の10分前にチャイムを鳴らして、お母さんに出迎えてもらって――。
玄関先で軽く挨拶を済ませてから中に通された。
小さい頃から住み慣れたはずのこの家が、奏芽さんがいらっしゃるというだけで異空間みたいに感じられて変に緊張してしまう。
お母さんが淹れてくれたコーヒーを前に、お母さんの正面に奏芽さん、奏芽さんの左隣に私、という席順で座った。
みんな正座をして畏っていて……壁にかかった時計の秒針が時を刻む、カチカチという音がやけに大きく聞こえて。
そんななか、最初に沈黙を破ったのは奏芽さんだった。
「初めまして。凜子さんとお付き合いさせて頂いています鳥飼奏芽と申します。父が院長をしている小児科で副院長をさせていただいています」
と。