私のおさげをほどかないで!
「――どうして急にそんなことを?」

 卑怯だとは思ったけれど、質問に質問で返す形で誤魔化させてもらった。


「はっきりどうして、とは言えないんですけど……そうですね。強いて言えば母親の勘です」

 そう言って俺をじっと見上げてくる凜子(りんこ)より少し小柄な向井さんの視線に、俺はスッと目を細めた。

 凜子はこの人に、本当に大事に育てられてきたんだ。

 そう思ったら中途半端な返しは出来ないと思ってしまって。


「……例え何かあったとしても、俺があなたの分まで全身全霊をかけてお嬢さんを守り抜きます。それじゃ、ダメですか?」
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