私のおさげをほどかないで!
「――凜子(りんこ)二十歳(はたち)になったら、俺が本当に凜子の全部、もらっても構わねぇか?」


 耳元に密やかに落とされた、(ささや)きにも似たその言葉。

 まるで懇願(こんがん)するみたいな恐れを含んだ、低く掠れた大好きな奏芽(かなめ)さんの声音。


 それを聞いた瞬間、私の心臓は大きくトクンッと跳ねた。


 私は奏芽さんをそっと見上げると、小さくうなずいて……奏芽さんの目を見てハッキリと「はい……」って返事をした。


 むしろ、今すぐでも構わないとさえ思っていますって言ったら、奏芽さんは困った顔をなさるかな?


 奏芽さんの前でならば、私、このおさげ髪も解ける、って思ったの。
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