私のおさげをほどかないで!
 こんなことではいけない、と思うのに。

 自分でもどうしたらいいのか分からなくて、もどかしさに泣きたくなってしまう。


 周りのみんなが「焦らなくていい」「大丈夫だよ」って言ってくれるたび、それが有難い反面、その優しさに甘えていてはダメだと強く思うの。


 身体の方の傷はほぼ癒えた――まだ足首にはアザが残ってしまっているけれど――のに、心がそれに伴っていないとか。


 いつも、物陰からまたあの男が出てきて捕らえられてしまうんじゃないかと、そんなことばかり思ってしまう自分が嫌になる。

 私は……あの男に捕まった時、何が一番怖かったんだろう?

 気がつくと私、そんなことを考えることが増えていて――。

 ひとつだけ、何が一番怖かったのか、思い当たることがあることに気づいたの。
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