私のおさげをほどかないで!
***

「15日の凜子(りんこ)の誕生日なんだけどさ、このホテルに一泊しような?」

 夕飯を食べ終えて、奏芽(かなめ)さんと一緒に食器を片して。
 2人でリビングのソファに座ってぼんやりテレビを眺めていたら、奏芽(かなめ)さんが何でもないことみたいに、駅前にあるとある高級ホテルのリーフレットを手渡してきた。

 そのホテルはいつも外から眺めるだけ。私とは無縁の、〝ただそこにあるだけ〟の大きめの煉瓦(レンガ)造り風のお洒落な建物という認識だった。

 奏芽さんが差し出してきたリーフレットによると、そこはお菓子屋さんが作ったホテルらしくて、料理もさることながらケーキとかクッキーとか……スイーツがかなり期待できそうで。

「でもここ……」

 確か料金設定がかなりお高めだったはず。
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