私のおさげをほどかないで!
 おまけに可愛らしいうさぎのキャラクターがあちこちに配されているからか、女性にとても人気があって、予約を取るのも大変なんだと、前に四季(しき)ちゃんから聞いたことがある。

 四季ちゃん自身、彼氏に泊まりたいとおねだりしまくって、数ヶ月がかりでやっと、先の春休み中にお泊まりが実現したのだと大喜びで話してくれたのを覚えている。



「うちの患者さんの母親の親御さんがここの支配人でな」

 だから通常よりは割安で優遇してもらえたんだと奏芽(かなめ)さんは言った。


 でも――それにしたって、絶対安くはないはずなの……。


 私の今年の誕生日は土曜日で、翌日は私も奏芽(かなめ)さんもお休みの日曜日という最高の並び。


 夜は一緒にお祝いしよう、翌日もふたりで《《まったり》》しよう、などとは話していたけれど……まさかそんなところにお泊まりだなんて。



「あ、あの……でも」

 2人きりで過ごせるならば、私はマンション(ここ)でだって全然構わないのに。


 そう思って口を開き掛けたら、人差し指を当てられて封じられてしまった。
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