私のおさげをほどかないで!
***

 たどり着いた先がっ。


 どうみてもリーズナブルなお部屋ではないというのが、扉を開けた瞬間に。

 何ならここに至るまでに見てきた他の部屋のものより数倍高級感あふれる扉の前に立った瞬間に……。

 スパーンと分かってしまって。



 その豪華な雰囲気に圧倒される余り、ワクワクと幼な子のように浮き足立っていた気持ちが、一気に戸惑いに押し流されて霧散してしまったの。


 いくら無知な私でも、この部屋の広さは尋常じゃないって思う。


 80平米(へいべい)は有りそうなだだっ広いお部屋と、重厚感のある調度品。

 横の広がりだけでもすごく広いと感じるのに、上も船底天井(ふなぞこてんじょう)になっていて全く圧迫感を覚えない。

 そんな天井のそこここに、このホテルのマスコットキャラである羽のついたうさぎが数箇所に配された小さなシャンデリアがさりげなくぶら下がってキラキラと光を跳ね返しているの。


 そのインパクトは、シングルベッドと小さなライティングビューロー1つで一杯一杯の、シングルかツインにしか宿泊経験のない私を入り口付近で固まらせてしまうには十分だった。
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