私のおさげをほどかないで!
「なぁ、凜子(りんこ)。ひょっとして……無駄遣いだって怒ってる?」


 私が何も言わない――実際には驚きすぎて言えなかっただけなんだけど――から、不安になったのかな?


 奏芽(かなめ)さんが眉根を寄せて不安げに問いかけていらして。


 違うの奏芽さん。
 気後れはしているけれど、決して怒っているわけじゃないのです。


 むしろ私のためにここまでしてくださる奏芽さんには感謝の気持ちしかないんですよ?


 た、確かにやりすぎだと思いますけど――。


「怒ったりは……してないです。ただ……あんまり凄いお部屋だったので……圧倒されてしまって」


 しどろもどろながらも何とかそう告げたら、奏芽(かなめ)さんがホッとしたように吐息を落として。



凜子(りんこ)、おいで」

 そう言って手を差し伸べてきて、優しく私の手を取った。
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