私のおさげをほどかないで!
「却下。結んであったら引っ張りたくなるし、さすがにここまで来て手を出さないとか、そんな選択肢選ぶヤツがいたらアホだと思うわ」

 ああ、でも。
 こんなふうににべもなく返すのは……出会ったばかりの頃の奏芽(かなめ)さん?


「なぁ凜子(りんこ)、いい加減覚悟を決めて、俺にすべて任せろって。痛くしないとは言わねぇけどさ。絶対()()後悔しないし……凜子と気持ちよくなれる自信があるんだよ」

 言われた瞬間、そんな恥ずかしいことさらりと言う奏芽さんに、そう言えばこれが私のなかの奏芽さんの第一印象だったっけ、ってぼんやり思って。


「年上らしく、初めてのときぐらい優しくしてやるよ、とか言ってくれてもいいじゃないですかっ」

 あんまりにも身勝手な言い分に、段々腹が立ってきて、キッと彼を睨みつけながらそう言ったらクスクスと笑われて。

「優しくして欲しいなら自分からそう言えよ。こういうときくらい俺、素直な凜子が見てみたいんだけどな?」


 言って、私を強引に引き寄せるようにギュッと髪の毛を引っ張てくるの。
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