私のおさげをほどかないで!
「ご心配おかけしてすみません……っ」

 泣きそうになりながら言ったら、「俺が不注意だったんだ。凜子(りんこ)、酒飲むの初めてなのに飲ませ過ぎちまった。ごめんな? セーブしてやれなくて」って。

 奏芽さんはどこまでも優しくて。
 彼に大切にされるたび、幸せすぎて胸がギュッと痛くなる。
 大好きって気持ちが溢れて苦しくてたまらない。
 好き過ぎて不安になるとか言ったら、わけ分かんないって奏芽さんに怒られてしまうかな。


 夢の中の奏芽さんは強引で自分勝手で今の彼とは大違いで。
 でもあの中でさえ、私は確かにこうあって欲しいと願ったことがあって。


「私、奏芽さんに……早く……、……て、もらいたいです」


 途切れ途切れに言ったら、肝心なところがはっきり言えなくて、小首を傾げられてしまった。

 私はうつむいたままうまく伝えるための言葉を探して。
 でも恥ずかしくて無理で。
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