私のおさげをほどかないで!
***

 脱衣所のドアが開くと同時、ふわりと漂ってきた薔薇の香りが鼻先をかすめて、私の心臓は破裂しそうに大きく飛び跳ねた。

 やっぱり嗅ぎ慣れた柑橘系の香りじゃない奏芽(かなめ)さんは違う人みたいで緊張してしまう。



 奏芽さんは、私が身体を起こしていて……あまつさえベッドの上に正座なんてしていたものだから、すごく驚かれたみたいで。

 慌てたように私のすぐそばまでやってきた。



「……凜子(りんこ)、起きてて平気なのか?」

 勢いそのままに奏芽さんが私のすぐそばに片ひざをついて、顔を覗き込んでくる。
 その反動で、ベッドがギシッと音を立ててたわんだ。


「も、平気です……」

 自分でもその声が緊張で震えているのが分かって、それが余計に戸惑いを助長する。
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