私のおさげをほどかないで!
凜子(りんこ)、気付いてる? さっきからずっと腰動いてる」

 笑みを含んだ声音でそう背後から(ささや)かれて、胸を離れた指先が、お湯に濡れた私の髪の毛を耳に掛けて首筋をあらわにする。
 そのまま耳朶(じだ)()むように「ね、凜子。どこに触れられたいか、素直に言ってみ?」と、言葉とは裏腹にどこか強請(ねだ)るような甘えた声を落とすの。

「っ、――ぜっ、たい、無、理ですっ」

 そんな恥ずかしいこと、自分から言えるわけない。

 それが分かっているくせに、意地悪をしてくる奏芽(かなめ)さんが、憎らしくて堪らない。


 さっき、奏芽さんにベッドで高みへ昇らされた身体は、ほんの少しの刺激でも簡単に反応してしまって。
 しかも、その先のさらに大きな波を知っているから、貪欲にそれを求めてしまう。


「凜子から言えないなら、俺がしたいようにしていい?」

 低い声音でそう問いかけられた私は、その言葉に(すが)り付くみたいに小さく何度もうなずいた。

「はい、それでいいですからっ」

 ……お願い、もう、意地悪しないでっ?


「了解。――けどさ、自分で言えないんだから……俺の要求にイヤとか言いっこなしな?」

 でも、その直後、どこか含みを感じさせる低音ボイスで「守れるよな?」と念押しされた私は「え?」と彼を振り返って――。
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