私のおさげをほどかないで!
「とりあえず元気そうで安心した。――仕事終わったら一緒に飯でも食いに行って、ゆっくり話そうな?」

 言って、そのままクルリと(きびす)を返すと、奏芽(かなめ)さんったらトイレではなく診察室の方へ戻って行くの。
 私はそんな奏芽さんを呆然と見送りながら「トイレは!?」って思って、そこでやっと「もしかしてトイレ(それ)は口実だったの?」と気がついた。

 ――私のこと、心配して顔を見にきて下さっただけ?


 そう分かったら、嬉しさと恥ずかしさで身体がブワッと熱くなった。


 私は思い出したように服の中に隠れているネックレスをギュッと握って。

 奏芽さんの残り()に包まれながら、彼と繋がれていることを切ないくらいに愛しく思った。
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