私のおさげをほどかないで!
Epilogue
「鳥飼さーん、鳥飼凜子さん、どうぞ」
日中より若干照明が控えめになっているように感じられる白い空間。
夜間受付を済ませて長椅子に座っていたら名前を呼ばれて。
奏芽さんが私の手を握る手に力を込めた。
「立てるか?」
「はい」
身体が思うように動かせなくなってきてからは、こんな風に奏芽さんに労られるように支えられることが時々あって。そのたびに奏芽さんの優しさが嬉しいのと同じくらい照れ臭くて。
でも今日は――今夜だけはそんなこと言っていられそうにない。
立ち上がって奏芽さんに身体を預けるようにしてすり足で恐る恐る少し歩いたら、下腹部から生温かいものがチョロリと溢れ出た気配がして、思わず立ち止まる。
「凜子?」
「あ。だっ、大丈夫です」
慌てて言ったら、
「無理はするな。凜子だけの問題じゃないんだからな?」
そう言われて、慈しむようにお腹に触れられて。
それだけで私はじんわりと幸せな気持ちに満たされる。
初めて奏芽さんと結ばれた日、いつか奏芽さんの赤ちゃんをこのお腹に宿すことが出来たならどんなにか幸せだろう、と夢見たことを思い出す。
日中より若干照明が控えめになっているように感じられる白い空間。
夜間受付を済ませて長椅子に座っていたら名前を呼ばれて。
奏芽さんが私の手を握る手に力を込めた。
「立てるか?」
「はい」
身体が思うように動かせなくなってきてからは、こんな風に奏芽さんに労られるように支えられることが時々あって。そのたびに奏芽さんの優しさが嬉しいのと同じくらい照れ臭くて。
でも今日は――今夜だけはそんなこと言っていられそうにない。
立ち上がって奏芽さんに身体を預けるようにしてすり足で恐る恐る少し歩いたら、下腹部から生温かいものがチョロリと溢れ出た気配がして、思わず立ち止まる。
「凜子?」
「あ。だっ、大丈夫です」
慌てて言ったら、
「無理はするな。凜子だけの問題じゃないんだからな?」
そう言われて、慈しむようにお腹に触れられて。
それだけで私はじんわりと幸せな気持ちに満たされる。
初めて奏芽さんと結ばれた日、いつか奏芽さんの赤ちゃんをこのお腹に宿すことが出来たならどんなにか幸せだろう、と夢見たことを思い出す。