私のおさげをほどかないで!
 結婚って……家同士のことでもあるんだ。

 自分たちの気持ちだけでどうこうしてはいけない部分もあるのだと、奏芽(かなめ)さんに言われるまで気づけなかった子供っぽい自分のことを凄く恥ずかしく思った。

「まぁアレだ。俺がさ、かなり長いこと親を待たせちまったから……そのツケが回ってきてんだよ。ごめんな?」

 それなのにそんな私に奏芽さんは優しく「自分のせいだ」と言ってくださって。


 9年前に奏芽さんの2つ下の妹――音芽(おとめ)さんが奏芽さんの幼なじみの温和(はるまさ)さんと結婚なさってからずっと、奏芽さんのご両親は長男である奏芽さんにも〝その日〟が来るのを今か今かと待ちわびていらしたらしい。

 そりゃあ、盛大にもなんだろ?ってバツが悪そうに笑った奏芽さんの顔が、今でも鮮明に思い出せる。


 奏芽さんって本当、最初のイメージでは破天荒な俺様気質だったけれど、知れば知るほど周りにすごく気を遣っていらっしゃるのが分かって。

 私はそんな彼とともにこの先の人生を歩んでいけることを、心の底から幸せだなって思ったの。
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