私のおさげをほどかないで!
 ハンドルにもたれかかるようにしていた身体の向きを変えて、凜子(りんこ)の方を向くと、彼女の手をギュッと握って顔を見つめる。

「……っ、」
 途端、真っ赤な顔をして身体を目一杯窓の方へ倒すと、それでも凜子は俺の問いかけに小さくうなずいた。

「まぁ、出さねぇと確かにヤバイかな〜」

 言ったら、「ば、爆発しちゃうって聞いたんですけど!」とか。
 ちょっ、片山さん、凜子のこと、からかいすぎだろ。

奏芽(かなめ)さん、そのっ、だっ、だっ、だ……」
「だ?」
「……出、さ……なく、て……大丈夫なんですかっ?」

 泣きそうな顔をして俺を見つめてくる凜子が可愛くて、俺は思わず笑いそうになる。けど、真剣な凜子に対してそれはダメだ。

 おい。何の罰ゲームだよ、これ。
 俺、自分で処理するから大丈夫だよ、とかリアルに説明していいわけ?
 それともメルヘンチックに誤魔化すべきなの?

 俺を見つめる凜子の目からポロリと涙が落ちて、俺はほとほと困り果てる。

< 527 / 632 >

この作品をシェア

pagetop