私のおさげをほどかないで!
***
アパートから少し離れた袋小路の先に、見慣れた白のボルボが停められていた。
「凜子、今はとりあえず初っ端だと思って許したけどさ。次、車から降りて手ぇ繋ぐときは俺の真横を歩くこと。斜め後ろついてくるとか……。寂しいだろ、俺が!」
助手席を開けてくれた奏芽さんに促されてシートに腰掛けたと同時。覆いかぶさるようにしてそう言われた私は、「俺が!」に過剰反応して心のなかで小さく声にならない悲鳴を上げた。
はい……と小声で答えながら、恥ずかしさにうつむいた私に、「凜子、こっち向いて?」と奏芽さんが低音ボイスでささやくようにおねだりしてくる。
その声に抗えなくて、恐る恐る顔を上げたと同時、ついばむようなキスをされた。
「ひゃっ」
鼻先を掠めた柑橘系の香りと、唇に触れた柔らかな感触に、今度こそ思わず情けない声が漏れて、心臓がバクバクした。
「……早く二十歳になれ、凜子」
真っ赤になって唇を押さえた私を、切なげな表情で見つめてから、奏芽さんがボソリとそうつぶやいた。
私も……その日が待ち遠しくて堪らないと思う一方、じゃあそうなったらどうなるのかな?って考えたら全然想像がつかなくて、それが少し怖くもあって。
私は、その日までにちゃんと奏芽さんにふさわしい女性に成長できるかな?
そんなことを考えた。
アパートから少し離れた袋小路の先に、見慣れた白のボルボが停められていた。
「凜子、今はとりあえず初っ端だと思って許したけどさ。次、車から降りて手ぇ繋ぐときは俺の真横を歩くこと。斜め後ろついてくるとか……。寂しいだろ、俺が!」
助手席を開けてくれた奏芽さんに促されてシートに腰掛けたと同時。覆いかぶさるようにしてそう言われた私は、「俺が!」に過剰反応して心のなかで小さく声にならない悲鳴を上げた。
はい……と小声で答えながら、恥ずかしさにうつむいた私に、「凜子、こっち向いて?」と奏芽さんが低音ボイスでささやくようにおねだりしてくる。
その声に抗えなくて、恐る恐る顔を上げたと同時、ついばむようなキスをされた。
「ひゃっ」
鼻先を掠めた柑橘系の香りと、唇に触れた柔らかな感触に、今度こそ思わず情けない声が漏れて、心臓がバクバクした。
「……早く二十歳になれ、凜子」
真っ赤になって唇を押さえた私を、切なげな表情で見つめてから、奏芽さんがボソリとそうつぶやいた。
私も……その日が待ち遠しくて堪らないと思う一方、じゃあそうなったらどうなるのかな?って考えたら全然想像がつかなくて、それが少し怖くもあって。
私は、その日までにちゃんと奏芽さんにふさわしい女性に成長できるかな?
そんなことを考えた。