私のおさげをほどかないで!
***

 もっともっと暑いかと覚悟して歩き始めた商店街。

 アーケードになっていて日差しが屋根でカットされているのと、要所要所で吹き付けてくるミスト、それからお店の開けっ放しの間口から漂ってくるエアコンの冷気のおかげで思ったほど暑くなくて。

 寧ろミストの下を通った後にエアコンの風に当たったりしたら、寒がりの私は鳥肌が立つくらい。

「案外涼しいですね」

 すっかり奏芽(かなめ)さんと手を繋いで歩くのにも慣れてきて、私はキョロキョロとあちこちを見回すゆとりができてきた。

「だな」

 そんな私を見て微笑んでくれる奏芽さんの顔にドキッとする。
 そういえば奏芽さん、私の歩調に合わせてくれているんだろうな。
 一緒に歩いていても全然しんどくない。

 やっぱりスニーカーで来て正解だった!
 これならまだまだ沢山歩けそう!

 そう思いながらふと前方を眺めて……。

 あ、あれは!って思う。
 四季(しき)ちゃんが、前に彼氏さんと食べて美味しかったって言ってたクレープ屋さんだ!

 私が一点を見つめているのに気付いたらしい奏芽さんが、「あれが気になんの? 休憩してくか?」って聞いてくれて。

「い、いいんですか?」
 男性は甘いものとか苦手な人が多いって聞いたことがある。
 四季ちゃんも彼氏さんを説得するのが大変だったって話してたもの。
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