私のおさげをほどかないで!
『ほら、うち、年上彼氏じゃない? 胸焼けするとかアラサーに生クリームはキツイとか普段は年寄り扱いするなっていう癖にバカなんじゃない!?って言ってやったのよ!』

 ふと耳の奥に、大きな身振り手振りを交えながら話してくれた四季(しき)ちゃんの声が蘇ってきて、私はすぐ横の奏芽(かなめ)さんを恐る恐る見上げる。

「ん? どした?」
 奏芽さんがキョトンとした顔をして見つめ返してくるのへ、私、思い切って聞いてみたの。

「奏芽さんは……甘いの……平気、ですか?」
 って。

 さすがにキツくないですか?とは言わずにおきました。

 奏芽さんは私の言葉に「ああ」と得心が言ったように微笑むと、「俺、妹と姪っ子に鍛えられてるから」って言って。

 それって得意ではないけど食べることは出来るよって意味、かな?

 私のワガママで、奏芽さんに無理させるのは嫌かもって思ってしまった心を読んだみたいに、「まぁ、甘いのか辛いのかって聞かれたら辛いの選ぶけど……甘いのも嫌いじゃねぇよ」って奏芽さんが繋いだ手をギュッと握ってくれるの。

「まだ妹がハルと結婚する前だから随分前になるけどさ……。パンケーキ屋でハルも混じえて3人で甘いの食ったけど、悪くなかったぜ?」
 って付け足してくれるの。
< 543 / 632 >

この作品をシェア

pagetop