私のおさげをほどかないで!
 そんなことハルに言ったら話がややこしくなんだろ、バカ。


「音芽と?」

 途端ハルが目を(すが)めてきて、俺は溜め息を落とす。


「最初は、な。音芽(いもうと)見てるみたいで放っておけなかったんだよ。――けど」

 そこまで言って、俺は温和(はるまさ)と雨宮を交互に見やって、「今は凜子(りんこ)は凜子だと思ってる」とつぶやいた。

 凜子(りんこ)音芽(おとめ)と似てると言われるのは何となく嫌だし、それはきっとハルも同じだろう。


 凜子自身も、そう見られることを望んでいないことを、俺は知っている。


「第一……」

 そこまで言ってハルに視線を流すと、「いくら可愛くても俺、音芽にキスしたいとは思わねぇわ」とニヤリとする。

「バカか。したいと思われても俺がさせねぇよ」

 途端ムッとしたようにハルが応戦するのが面白くて、思わず笑ってしまった。

「だからしねぇよ、音芽には」


 音芽(アレ)はどう転んだって俺にとっては妹以外の何者でもない。


 凜子とは違う。
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