私のおさげをほどかないで!
『――ペアにしとけ』

 黙り込んだ俺に、温和(はるまさ)が当然のようにそう言って。

「は?」

 思わず声を低めて聞き返せば『だから、ペアもんだよ。何か自分と同じの付けさせたら俺のものって感じすんだろ?』って。

 そういえば温和(はるまさ)のやつ、初っ端から音芽(おとめ)にペアリングやったんだっけか。

『結婚考えてんだろ? その子と』

 畳みかけるように言われて、俺は「まぁな」とつぶやいた。

『で、まだ〝して〟ねぇんだっけ?』

 クスクス笑われて、バツが悪くなった俺が吐き捨てるように「悪いか」って返したら『別に』って笑いまじりに言いやがんの。

 けど、そのあと不意に真剣な声音で『――だったら尚のことペアだな』って言われた。

 『奏芽(かなめ)だってその方が所有権主張できるみたいで安心だろ?』って言われて。

 気がついたらそんなハルにほだされるみたいに、「おすすめとかある?」と聞いてしまっていた。
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