私のおさげをほどかないで!
 そうこうしていたらチャイムが鳴った。

 インターホンですぐに出る旨を告げて、コンバースの黒いスニーカーを履いてからいそいそと扉を開ける。

(りん)ちゃん、準備OK? 忘れ物はない?」

 まるで先生が幼子を諭すように告げたのぶちゃんは、明るめなベージュのテーラードジャケットを白のTシャツの上に羽織って、発色のいいオリーブ色のパンツを合わせていた。
 とっても落ち着いた雰囲気の、大人の男性って感じ。

「大丈夫、もう出られる」
 言いながら外に出て、扉に施錠する。

「凜ちゃん、もしかしてお風呂上がり?」

 行こう?って振り向いたら、髪の毛が跳ねて、そこからシャンプーの香りが漂ったみたい。
 のぶちゃんが、何の気ないみたいにそう言って微笑んだ。

「あ、うん。バイト終えたばかりだったから……一応」

 でも何だかそういうことをのぶちゃんから言われたのは初めてで、妙に照れてしまった。

「凜ちゃんもそういうの、気にするようになったかぁ〜。いつの間にそんな大人の女性になったの」

 私が照れたのを茶化すように、のぶちゃんが笑う。
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