私のおさげをほどかないで!
***

 あれから数日、鳥飼(とりかい)さんに会わない日が続いて、ある意味平和だった。
 実は私が学校の授業の関係で1週間ほどバイトのシフトから抜いてもらっていただけなんだけど、気分的にもちょうどよかったって思ったの。
 何となく気まずくて鳥飼さんの顔、みたくなかったんだもん。

 気まずい、といえばのぶちゃんとも話が中途半端なままで頓挫してしまった。
 車内でもずっと無言で……のぶちゃん、何か思い悩んでいる風だった。
 私は私で一気に色々ありすぎて頭がパンクしそうで。
 あれ以上何があるわけでもなくアパート前まで送ってもらって、別れ際にのぶちゃんが「また連絡するね」って言ってくれたのに無言でうなずいただけ。
 まだ1週間も経っていないのだから問題ないのかもしれないけれど、今のところ連絡は来ていない。

 でも……のぶちゃんから連絡がきて……あの話の続きを、ってなったら私、なんて応えたらいいんだろう。

 あの時もしも鳥飼さんの邪魔が入らなかったら……私はのぶちゃんとキス……とかしちゃっていたの、かな。
 それとも寸前で「待って!」って言ってしまってた?
 何となく後者な気がして、あんなに大好きだったはずなのに何で?って戸惑って。
 少し前の私なら舞い上がるぐらい嬉しかったはずなのに、悲しいくらいモヤモヤと心が晴れなくて、憂鬱な気分で。

 これというのもあの男――鳥飼(とりかい)奏芽(かなめ)――が私の生活を引っ掻き回したからに違いない。
 妻帯者――というかあんなに可愛いお嬢さんまでいるくせに。
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