見つかった探しもの、見つからない気持ち【優秀作品】
その夜、私が宿題をやっていると、スマホが振動した。

私のスマホは、学校で鳴らないように常にマナーモードになっている。

手に取ると、登録してない電話番号が表示されている。

誰だろう?

私は不審に思いながらも、通話ボタンに触れた。

「もしもし?」

すると、スマホから聞き覚えのある声。

「もしもし、青木? 俺」

俺って……

「えっと、小西くん?」

私は信じられない思いでいっぱいになりながら尋ねる。

「そう。青木、俺の番号、登録してくれてないの?」

「あ……」

言われてみれば、さっきの着信履歴を登録しておけば良かったことに気づく。

「それから、LINEも。俺がいくら送っても反応がないんだけど」

「えっ?」

LINE!?
そんなの届いてない!

「青木、俺を友達追加してくれてないだろ?」

小西くんは不貞腐れたように言う。

「あ……」

そうだ。
だって、勝手に追加したら、好きなのがバレちゃう気がして、出来なかったんだ。

「この電話が終わったら、番号を登録して、LINEも追加しといてくれよ?」

小西くんは、電話の向こうで笑いながら、そう言う。

「うん」

私はうなずきながらも、首を傾げる。

わざわざ電話してきた要件って、それ?

小西くんからの電話は嬉しいけど、そんなことでわざわざ電話をくれるとは信じられない。

「でさ、小西、今日の宿題なんだけど、もうやった?」

宿題?

「今、やってる」

数学があまり得意じゃない私は、なかなか進まない。

「宿題って、125ページで合ってる? 俺、メモしたはずなんだけど、見当たらなくて……」

ああ、そういうこと?

「うん、合ってる。125ページの1番から126ページの7番まで」

私が答えると、小西くんは、

「ええ!?」

と声を上げた。

「そんなに!? 俺、1ページだと思ってたよ。今日、英語もあるのにぃ」

明らかに落胆した声。

その子供みたいな反応に、思わず、笑みがこぼれる。

「ふふふっ、頑張って! 小西くんは私と違って、数学得意でしょ?」

数学の宿題をほうりだしたいのは私の方。

「数学は得意だけど、英語がさぁ……」

小西くんはモゴモゴと口ごもる。

「あ、青木、英語得意だろ? 分かんないとこあったら、LINEしていい?」

えっ?

「う、うん」

確かに、英語は得意だけど、それで小西くんとLINEできるの!?

「代わりに、数学で分かんないとこあったら、聞いて! 数学なら、俺、教えられると思うから」

うそっ、ほんとに!?
すっごく嬉しい。

「うん、分かった」

私たちは、そんな約束をして、一旦、電話を切る。

けれど、1時間後、また小西くんから電話があり、お互いに英語と数学を教え合った。

< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop