見つかった探しもの、見つからない気持ち【優秀作品】
翌日、私が登校すると、真っ先に小西くんが、

「青木、おはよう!」

と声をかけてくれた。

こんなこと初めて。

「おはよう」

私は挨拶を返して、席に着く。

すると、いつも一緒にいる未来(みく)が話しかけてきた。

「何? 小西くんと何かあった?」

何かって言われても……

「昨日、失くしたスマホを一緒に探してくれたの」

私は、夜の電話のことは、なんとなく2人だけの秘密にしたくて、それだけを告げた。

「そうなんだ? それで仲良くなれたのね! 良かったね」

私の片思いを知ってる未来(みく)は、そう言って私の肩をポンと叩いた。



その日、1日を何事もなく終えて、私はいつも通り帰宅する。

いつも通り、夕飯を食べ、机に向かう。

すると、しばらくして、またスマホが震えた。

画面に表示されているのは「小西 将大(こにし まさひろ)」。

開くと、LINEに写真が届いている。

おいしそうなアイスの写真。

その直後、メッセージも届いた。

「暑いから、アイス食べてる」

これ、どう返す?

一瞬、迷ったけど、いつも女友達に返すのと同じように、

「おいしそう! 私にもちょうだい!」

と返した。

すると、すぐにスプーンですくったアイスの写真が届く。

「あーん」

というメッセージとともに。

あーんって言われても、食べられるわけがない。

「むり〜!」

私は軽く返事をする。

すると……

「じゃあ、今度、アイス食べに行こ」

とメッセージが届いた。

えっ、これって、どういう意味?

2人でアイスを食べに行くの?

それとも、みんなを誘って大勢で行くのかな?

よく分からないから、返事に困る。

でも、断りたくはない。

「やったぁ! また今度ね」

私は、未来にLINEしてるつもりで軽く返事をする。


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