見つかった探しもの、見つからない気持ち【優秀作品】
それから、そんな他愛もないLINEが毎日届くようになった。

そして、1週間後、テスト前期間に入り、部活が休みになった。

私は、部活の仲間ではなく、未来と駅まで歩く。

すると、後ろから声をかけられた。

「青木、早野!」

早野は未来のこと。

私たちが振り返ると、小西くんが駆け寄って来るのが見えた。

「どうしたの? そんなに息を切らして」

未来が呆れたように尋ねる。

「いや、別に。2人の姿が見えたから、声を掛けただけ」

だけ?

わざわざ走って追いついて来たのに?

未来はクスクスと笑みをこぼす。

「はいはい、そういうことにしておこう!」

未来は、分かってると言わんばかりに、大きくうなずく。


駅に着くと、反対方面へ帰る未来は、改札から、向かいののホームへ向かう。

すると、別れ際、未来は言った。

「小西くん、痴漢がいるといけないから、ちゃんと麻美(あさみ)を送ってやってね」

それを聞いた小西くんは、軽く親指を立てて答える。

「おう、任しとけ」

いや、朝と違って、帰りの電車で痴漢なんて滅多にいないし。

そう思ったものの、そんなことを言えるはずもなく、私たちは、2人並んで電車に乗った。

「アイス、いつにする?」

電車に揺られながら、突然小西くんにそう聞かれて、困った。

いつって、どう答えればいい?

「えっと……」

私が困ってると、小西くんが切り出した。

「テスト最終日なんてどう? 頑張ったご褒美に」

それはもちろんいいけど……

私が気になるのはそこじゃない。

それって、2人で?

それとも、みんなと? 

よく分からないまま、私は、答える。

「うん、大丈夫」

すると、小西くんは嬉しそうに笑った。

「よし! じゃあ、テスト勉強、頑張ろっ」

いつも頑張ってる小西くんがさらに頑張るの?

「じゃあ、私も頑張る!」

私は、小西くんを見上げてそう言うけれど、目があった瞬間に、パッと目を逸らして顔を伏せてしまった。

だって、なんだか恥ずかしくて……

小西くんは、そんな私の頭をポンポンと撫でて、

「一緒に頑張ろうな」

と言った。




あの日、スマホを探しに戻った教室で小西くんと会った。

スマホは見つかり、小西くんと毎日話すようになったけど、私は、今もまだ小西くんの言いたいことがよく分からなくて、でも聞けなくて、毎日、小西くんの気持ちを探している。




─── Fin. ───


レビュー
感想ノート
ひとこと感想

楽しみにしてます。

お気軽に一言呟いてくださいね。
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:20

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ねことねずみが出会ったとき【佳作】

総文字数/5,778

絵本・童話9ページ

表紙を見る
"鬼"上司と仮想現実の恋

総文字数/146,428

恋愛(オフィスラブ)407ページ

表紙を見る
ヒーローが好きな私が好きになった人

総文字数/6,407

恋愛(オフィスラブ)7ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop