初恋=人気俳優
 終業後、訪室した。

「今日もありがとうございました。明日は、検査頑張って。良ければ、ごはん始まるかも。」
「明日休み?」
「いや、夜勤。」
「そっか、じゃあ、夕方待ってるね。」
「では。」

『待ってるねとかやめて。ドキドキが止まらない。』
彼のことが好きなのは、今でも変わらない。
高校や専門時代に彼氏を作っても、全然乗り気じゃなかったのは、初恋をずっと忘れられずにいたからだった。

帰ってから、昔、最後にもらったヘアピンを見た。
懐かしかった。今、目の前にいる。
『このまま、退院して、さよならでいいのか?でも、相手は人気俳優。どうしようもできない。』

ネットで、『RYOTA』を検索した。
高校生の時にスカウトされて、芸能界に入り、数々のドラマ・映画に出ているらしい。
映画を見てみることにした。

私の知らない涼太くんがそこにいた。

『やっぱり、私には、無理だ。退院したら、会わないほうがいい。遠い存在なんだ。』
私は、諦めた。気持ちを押し殺すことにした。
< 10 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop