ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 よかった。これで誤魔化せるかも。

「すごいな。もうピースができるのか。そうだな、二歳だよな」

 優しい口調で蒼さんは指を二本立てた。蒼斗は目をぱちくりさせたあと、男性にしては長くてしなやかな指を掴んで左右に振って遊び始める。

 その光景に絶句していると、蒼さんが口角を引き上げて目線をこちらによこす。

「母子手帳を見たと言っただろう? 四月三日が誕生日なら、今は二歳三ヶ月か」

 頭を抱えたい衝動をグッと堪える。

「蒼さん、暗記力よすぎ」

「ありがとう」

 嬉しそうに表情を緩めるものだから、盛大に溜め息をつきたくなった。

「そんなことより、蒼さんいつまでここにいるの? 用事があるんでしょ。そもそも今日は仕事じゃないの? ここで油を売っていて怒られない?」

 矢継ぎ早に言葉を重ねると、蒼さんはクックッと肩を揺らして笑う。

 早くこの場から離れてほしいという考えなんてお見通しなのだろう。でも彼は私の気持ちを汲んではくれない。

「今日は顔を出しにきただけなんだ。正式にここで勤務するのは週明け。だからみちると蒼斗に付き添ったところで問題はない」

 こちらは問題大ありだ。
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