ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 初っ端からテンション高く動き回っていたせいか、蒼斗の足取りがのろのろし始めた。活発な子なので、同じ年代の子供と比べて体力はあるほうなのだけれど。

「蒼斗疲れた? ベンチに座って休憩しようか」

「いやっ。あれ、のる!」

 ムッと口を尖らせてから蒼斗が指差したのは、くまの絵が描かれたコースター。パンフレットで確認してみると、保護者同伴なら二歳児でも乗れる。

「ママ、あっこ」

「抱っこでもいいんだけど、疲れているならやっぱり休まない?」

「いやっ!」

 耳がキーンッとするような大きな声で叫ばれ思わず眉間に皺が寄る。

「うん、わかったよ」

 抱っこしようと屈みかけたとき、蒼さんが私の腕をやんわり掴む。そのまま自身の背中に私を隠して、蒼斗に優しく語りかけた。

「肩車しようか。俺の肩に乗るんだ。すごく高いから面白いぞ」

 恐る恐るといった様子でうなずいた蒼斗を肩に担いで立ち上がる瞬間、蒼さんは「うぐっ」と変なうめき声を出した。

 よく見てみたら、蒼斗が両手を彼の首に巻きつけている。笑ってはいけないけれど、ささやかな日常の一コマが面白くて肩を揺らしてしまった。

 肩車をしてもらった蒼斗の瞳が、嬉しくてたまらないといったようにキラキラ光っている。
< 112 / 193 >

この作品をシェア

pagetop