ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 降り場から走って戻ってきた蒼斗を抱き留めて、小走りでやってきた蒼さんに提案してみる。

「出入口に記念撮影用のベンチがあったから、三人で撮らない?」

「そうだな」

「いいねえ」

 相槌を打つ蒼斗が可愛くて頭を撫でる。

「蒼斗がコースターにもう一度乗りたいらしいんだけど、いいか?」

「もちろん。蒼さんがよければ」

「よかったな、蒼斗」

 蒼斗はその場でジャンプをして、蒼さんの手を自然に取る。

「とうしゃん、あっち」

 結局呼び方は『とうしゃん』で落ち着いた。初めて呼ばれたときはさすがに狼狽えていた蒼さんだったが、最近ではすっかり受け入れている。

 手を引っ張られて、前屈みになりながら連行されるうしろ姿に笑みがこぼれた。

 蒼斗にこれまで父親がいないことについて問われたことはない。だけどまだ言葉が上手く出てこないからで、本当は幼心に疑問を抱いているかもしれない。

 私は小さい頃、優しくて身体が大きな父親が大好きだった。蒼斗は蒼さんを父親として受け入れてくれるかな?

 ふたりが仲睦まじく喋っている姿に熱いものが込み上げてきて、頭を左右に振って無理やり口角を上げた。
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