ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「そうだとしても、以前勤務していたんだから顔は知られているでしょう? ここにいたらなにを言われるかわからないよ」

「みちるはなんの心配をしているんだ?」

 言下に質問返しをされて言葉に詰まる。

 彼の指には結婚指輪がない。しかし手術を執刀する医師はきっと結婚していても指輪はしないだろう。

 結婚……しているよね? たとえまだだとしても、例の女性と交際しているはず。こんなところを目撃されたらなんと言われるか、想像するだけで胃の辺りがキリキリするようだった。

 返事ができないでいると蒼斗が私の太腿をぺちぺちと叩く。

「あっこ、あっこ」

 一日のうちに何十回も耳にしている舌足らずな話し方なのだが、毎度可愛くて胸がきゅんとする。

「だっこね。おいで」

 抱き上げて太腿の上に座らせたのだが、求めていたものではないと蒼斗は手足をバタつかせた。

「そうだね、こっちの方がいいよね」

 よいしょっと声を出して立ち上がると、蒼斗も真似して「よいしょ」と言う。

 最近こうして私の真似をしているせいか話せる言葉の数が増えた。二語文はあまり出ないけれど、それでも言葉の理解はかなり進んでいる。
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