ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 髪の毛が邪魔で傷口が見えない。縫うような傷であればすぐにでも病院へ連れて行かないと。

 でも頭皮は身体の皮膚のなかで最も血管が多いから、ちょっとした傷でも出血するっていうし……。

 押さえているタオルに染みる血液の範囲がどんどん広がっていく。

 どうしよう。判断がつかない。

 迷っているくらいなら誰かに相談した方がいいと、蒼さんに電話をしてみたけれど繋がらなかった。

 なにか起こってからでは遅い。

「病院へ行こう」

 必要なものをリュックサックに詰めて背負い、泣き止みはしたがまだしゃくりを上げる蒼斗を抱っこする。

 下まで降りて蒼斗をチャイルドシートに乗せ、ヘルメットと頭部の間にタオルを挟んでバックルを装着した。

 これなら傷口の圧迫がされるはず。

「今から病院に行くから、もう少しだけ頑張ってね。痛いの痛いの飛んでいけーってしてもらうからね」

 蒼斗が嫌だと言わず素直にうなずいてくれたので胸を撫で下ろし、サドルに跨って常盤総合病院を目指した。
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