ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 到着したのは十三時十二分。外来の時間を過ぎているので救命救急センター受付で現状を説明すると、緊急性が高いと判断されたのかすぐに診察室に通されて問診を受ける。

「まだ脳神経外科の先生が診療を行っていますので、このまま脳神経外科へ行ってください」

 看護師の指示に従ってフロア二階にある脳神経外科を目指す。おそらく蒼さんがいるはずだ。彼が担当してくれたらいいのだけれど。

 蒼斗の出血はだいぶ治まったものの、タオルを離して再び傷口に触れると血痕がつく。

 名前を呼ばれるまで椅子に腰掛け、太腿に乗せたままの蒼斗にお茶を飲ませた。

 泣き叫んでいたし、喉が渇いていたのかゴクゴクとお茶を飲む。飲みすぎではないかと心配になったところで、蒼斗は「ぷはーっ」とボトルから口を離した。

 機嫌もよくなったし、先ほど救命救急センターで測った体温も微熱のまま急激に上がったりしていなかった。

 安心感からようやく肩から力が抜け、ふうーっと息を吐きながら椅子の背もたれに体重を預けた。

 五分も経たないうちに呼ばれて診察室へ入ると、パソコンの前で椅子に腰掛ける蒼さんが眉間に皺を寄せた。

「傷口を見せて」

 一般的な患者と医師の間にあるやり取りはなく単刀直入に切り込む。
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