ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「頭頂部左側の……」

 タオルをどけて頭部を眺めながら説明をしていると、蒼斗が「とうしゃん?」と顔を起こす。

 白衣を着ていつもと雰囲気が違うので、時間差で気づいたようだ。

「そうだよ。俺が蒼斗の傷を治すからな」

「わーいっ」

 病院に着いてから一度も笑わなかったのに。

 蒼さんがもたらす安心感は私限定でなく、蒼斗にも及んでいるのかと驚く。

 しかし呆気に取られている場合ではない。蒼さんの周りに控えている男女数名のスタッフがざわついている。

 彼等の好奇心が声には出ていなくても表情だけで伝わってきた。

 これは明らかに、私たち親子が蒼さんとどういう関係か気になっているよね……。

「二針縫った方がいいな」

 縫合の必要があると知って胸がズキズキと痛む。私の不注意で蒼斗に大変な怪我をさせてしまった。
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