ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 処置を終えて待合室に行くと辺りは閑散としていた。

 外来の時間は過ぎているのでそりゃそうだよね、と納得しながら一階へ向かおうとしたとき背後から「みちる」と呼び止められる。

 振り返ると蒼さんがすぐそばまで歩み寄ってきた。

「自転車で来たのか?」

「うん」

「送っていく。薬を受け取ったら、正面玄関前のベンチで待っていてくれないか」

 一瞬迷ったが、ここで断っても前回のように蒼さんは引かない。それにもし蒼斗が後頭部を打ちつけていたら、これ以上頭に振動を与えない方がいいはずだ。

「ありがとう。助かる」

 素直に頭を下げると、蒼さんは表情を緩めて「すぐに行くから」と引き返していった。

 一階に下りて処方薬をもらい外のベンチに座る。

「蒼さんが家まで送ってくれるから、ここで待ってようね」

 蒼斗に説明をして、手遊びなどをして時間を潰していると。

「金森みちるさんですよね」

 不意に声をかけられて顔を上げた。

「はい。そうです」

 答えながら、久しぶりに目にした莉々沙先生の姿に心臓がドクンッと不快な音を立てた。
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