ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「突然すみません。常盤莉々沙と申します」

「存じ上げております」

 私の反応が予想通りだったのか、莉々沙先生は満足そうにうなずいた。ここまで間近で顔を見たのは初めてだ。

 切れ長でふっくらしているアーモンドアイは、知的でクールな印象を受けた。髪は束ねられているが艶がありサラサラしている。

 相変わらず綺麗な人だと唾をごくりと飲む。

「先ほどの処置室での話、うかがわせてもらいました」

 いったいどの話を指しているのかわからず硬直した。

「失礼ですが、金森さんは以前、大槻先生とお付き合いをされていましたよね」

 莉々沙先生は知らないと思っていたけれど、蒼さんが彼女に話したのだろうか。

 これからなにを言われるのだろうと緊張して呼吸が浅くなる。

「……はい」

「困るんです。こういうことをされると」

 莉々沙先生は丁寧な口調のなかに、微かだが嫌悪感を滲ませてきた。

「元交際相手がシングルマザーなんて、大槻先生の子供だと疑われるじゃないですか。大槻先生は権威ある方なんです。変な噂が立ったら困ります」

 一方的に言葉の刃を振りかざされて、怖いとか悲しいとか困惑よりも先に疑問を抱かずにはいられない。
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