ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「蒼から金森さんのお父さんの件、相談を受けているよ」

「あの……」

 それについてなにも聞かされていない。お願いをしている立場なので、どうなっているのか厚かましく聞けずにいた。

「大丈夫。もうすぐすべていい方に向かうから。俺と蒼に任せておいて」

 ベース音のようなお腹の底に響いてくる低い声が妙に心地よくて、不思議と安心感をもたらした。

「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「でも念のためこれを渡しておくよ。なにかあったら遠慮なく連絡をして」

 黒崎さんは手に持っていたビジネスバッグから名刺ケースを取り出し、一枚の紙を差し出す。

 頭を下げて受け取り、蒼斗にくちゃくちゃにされないようにすぐにバッグへしまった。

「蒼を待っていたの? あれ、蒼の車だよな」

 黒崎さんの視線を追うと、遠くの方から見慣れた車が走ってきた。目の前でハザードランプを点滅させた車から蒼さんが降りてくる。

「なにをしているんだ」

 開口一番、黒崎さんに突っかかる蒼さんの対応に目を丸くした。いつも物腰がやわらかいのでこういう姿は物珍しい。
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