ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
あなたを愛している
【二、あなたを愛している】


　――三年前。

　春の行楽シーズン真っ只中のゴールデンウィークが過ぎ去り、ようやく日常のリズムを取り戻し始めた五月十五日。

　汗ばむ陽気のときもあるなかで、この日は記録的な冷え込みだった。

　片付けたばかりの毛布を引っ張り出して眠りについていると、ベッドサイドに置いてあるスマートフォンが振動し続ける音で目が覚めた。

　部屋はすでに明るく、カーテンの隙間から儚げな朝日が差し込んでいる。

　液晶画面に見慣れない番号が羅列していたので、眉をひそめながらスマートフォンを耳に当てる。聞こえてきたのは見知らぬ女性の声だった。

　母親が救急車で病院に運ばれたと告げられ、ベッドから転げ落ちるように這い出る。

　昔から健康が取り柄の元気で明るい母親だったのだが、滅多なことでは弱音を吐かない性格なので、もしかして体調が悪いにもかかわらず黙っていただけなのかもしれない。
< 14 / 193 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop