ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 翌日の朝、スプーンで食事を蒼斗の口に運びながら、借金の件が無事に解決したとみちるに伝えた。

 蒼斗は咀嚼し終わると口を開いて次を要求するので、雛鳥のように可愛くて癒される。

 だいたい始めは自分でスプーンとフォークを使って食べようと悪戦苦闘しているのだが、疲れてくると食べさせてほしいと甘える。

 これまで甘える相手はみちる限定だったのに、最近その役割を俺にも任せてくれるようになった。

 信頼関係が築けているのだと実感して胸にくるものがある。

「事後報告で申し訳ないんだが、お父さんには、みちると交際をしている俺が借金の話を聞いて気にかかることがあり、弁護士であり友人の滉雅と一度話をしてほしいと電話で頼んだんだ。嫌な顔をせず取り合ってくれて、その後は滉雅に正式に依頼する流れとなった」

 蒼斗の頬についた米粒をつまんで取る。こんな漫画みたいな米粒のつけ方を本当にするのだと、子供と関わるようになって初めて知った。

「減額されたというのは、現実的に返せる金額なの?」

「もちろん。だから自己破産という手段は避けた」

「よかった……」

 胸に手をあててホッと息をついたみちるを見て、本心では父親を嫌っているわけではないと感じ取れた。
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